2009年8月7日金曜日

書物と酒と今と昔

巷はすっかり夏である。道を歩く小学生の姿も中学生の姿も見えない。学校関係は夏休みなのだ。わはははは夏休みぃ。

そんな中、まだ大学講釈師業の業務が続く。今さら文科省のバカバカしさを嘆く元気も湧かんけど、大学が率先して愚かな振る舞いを演じなければならないのは少々寂しい話でありますな。

講師控室なるものに座っているうち、出番の時刻が近づく。英会話学校の日々、「さぁそろそろ拷問部屋(torture chamber)に入る時間だ」などと同僚と冗談を交わしながら業務を開始したことをふと思い出す。だんだん大学も英会話学校みたいになってきたなぁ。逃げても逃げても追ってくる。つい何十年か前まで、大学といえば(あるいは大学らしい大学といえば)、金持ちの中から選ばれた男性が身支度して行く場所であった。今は、まるで違う場所である。別に「悪くなった」わけではない。これは世の流れの常なのだ。

今ではインターネットなるものが普及して、つーまらない情報がわんさと得られるようになっている。有用な情報は少ない。心身の滋養になる情報となるとさらに限られる。まぁ、そうなるんですわな。ちゃんと良いものはあり、また悪いものもある。これは変わらない。

紙とインクによる書物にせよ、特にコンピュータ製版+安っぽい糊綴(のりとじ)の本がわんさと出るようになってからは、ずいぶん事情が変わってしまった。1行読めば1行分だけ成長させてくれるような本に出会うのが困難になった。別にすべてが悪くなったわけではない。マトモな書物はちゃんと存在している。読んでためになる本が相対的に減ったけど。まぁ、そうなるんですわな。

書物といえば立派な装丁の本だった時代は良かったとも言えない。金の力でつーまらない本を出し、それを大量にバラまくこともできた。「印刷術のおかげでくだらない本が増えたねぇ。俺達の頃はねぇ、借りてきた本を懸命に筆写したもんよ。近頃の若いもんはダメだね。第一、きちんと字が書けないじゃないか。学力低下だよ…」みたいなことを言った人も多かったであろう。

いやいや、その筆写とやらも書記言語あっての話である。世界には数千の言語が存在するが、文字を持っている言語は驚くほど少ない。言語とは、基本的に音なのだ。したがって、「俺達の頃はねぇ、村の長老が語る物語をそのまま覚えたもんよ。近頃の連中は何でも字で書いちゃうから、覚えようとしない。あれじゃ本当にわかったとは言えないね…」と語った人々も多かったはずである(ただ、それを書いてくれなかったから、今の我々はそれを知ることがないのである)。まぁ、そうなるんですわな。世の流れの常でありますな。

要するに、味わうに足るものも、つまらないものも、その中間のものも、色々あるわけである。どの時代でも同じ。仮に「昔の方が良かった」としても、それが今でも味わえるのであればそれは今のものだし、失われてしまったものであればそれはもう決して手に入らない。ひょっとしたら「未来の方が良い」のかもしれないが、それはまだ手に入らないのだから仕方ない。

以上、前置きでした。えーと、実はですね、先ほど『明治屋酒類辞典』というのを眺めていたんですな。これによると、紀元前4200年にはバビロンにビールがあり、紀元前3000年にはエジプトにビールがあり、紀元前1000年にはギリシャ人が葡萄酒を水で割って飲んだというのである。まぁこの水割りは水の消毒のためだろうとは思う…けれど気になる。そしてやはり紀元前4200年のビール! そのように記録が残っているからには、それなりの質を持っていたのではなかろうか。いずれにせよ味見してみたいではないか。ううぅ…

しかし、上記の理路により、まぁ基本的には変わらんだろう、うまい酒もあれば、そうでない酒もあったんだろう、という推論が導かれる。何かが違うような気がする人もあるかもしれないが、気にしてはいけない。世の中、そう変わりませんって。その意味では、我々は現在を生きつつ紀元前4200年をも生きているのだ。

そう自分に言い聞かせつつ安い発泡酒の缶を疑わしげに眺める。うむ。それにしても、もう少し贅沢しても良いのではないか。日本の教育の質を高めるためにも重要なことではなかろうか。うむうむ。やはりドイツの葡萄酒といってみるか。うむうむ。では失礼。

2 件のコメント:

Seiichi さんのコメント...

初めてコメントします。
バビロンのピールはわかりませんが、古代エジプトのビールなら京大で飲めますよ。
http://karasuma.keizai.biz/headline/142/

「ホワイトナイル」の原材料となっている小麦は紀元前8千年頃から栽培されているのだそうです。
http://shop.kyotodays.jp/fs/kyotoseikatsu/k012009

Q Higuchi さんのコメント...

をぉ! これは知らなかった! やはりやってみたい人がいたんですな。もちろん問題は小麦というより製法だと思いますが、まぁこのあたりも研究なさっていることでしょう。「黄桜カッパカントリー」なら知ってます。また行ってみよっと…

自己紹介

自分の写真
日本生まれ、日本育ち…だが、オーストラリアのクイーンズランド大学で修行してMA(言語学・英文法専攻;ハドルストンに師事)。 日本に戻ってから、英会話産業の社員になったり、翻訳・通訳をやったり、大学の英語講師をしたりしつつ、「世の中から降りた楽しい人生」を実践中、のはずです。