2011年6月9日木曜日

武士道も空回りすると生兵法か

くだらないモノを読んでしまうことが多い昨今であるからして、良い書物に触れると「あぁやっぱり良いなぁ」という幸福感に包まれる。腹の底の方に暖かいものが感じられるほど、この幸福感は身体的でもある。そして「もうアホなことに時間を割くのはやめよう」というちょっとした反省感も頭をよぎる。

宮本武蔵の『五輪書』も、そんな「やっぱり良いなぁ」感を与えてくれる書物である。何しろ刀を振り回して殺し合いをする世界で修行を重ねた人の言うことだから、「こう構える。こう動く。なぜならば、こうだから」と話は徹底的に具体的であり、理詰めである。そして無駄がない。

ところがこの話、同時にフッとどっか大きいところに飛んでいる。「正しく明らかに、大きなるところをおもひとって、空を道とし、道を空と見る所也」と来たりする。これも理解できる。何しろ殺し合いの世界、良く考えてみると無意味なのだ。相手が憎ければ、実のところ放っておけば良い。放っておけば、相手はいつか必ず死ぬんだから(←これ河合隼雄の名言)。逆にまた、放っておかれれば、自分も必ず死ぬ身である。

というわけで、大きく生命をとらえ、死を見つめる目がある。それがそのまま「こう構える。こう動く」という話とつながっている。徹底的に具体的で理詰めの話と、どっかに飛んだ話とが見事に共存している。いや、そもそもこの両者に区別があってはならないのだ。目の前の具体的な現実と、頭で考えているだけの理屈とが、バラバラであってはいけないのである。バラバラになる方がオカシイのである。常に迷いなく、ピシリと道にかなった行動を取る。そこに両者の分裂はない。

そんな当たり前のことを思い出させてくれる名著であるからして、読めば思わずこちらも自分の精神の襟を正すことになる。ううむ、良いですよ、これは。

実は、以上を前フリとして、具体的な事実を理解しない人たちが「がんばっている自分に酔うため」に行っている根本的に無意味な節電活動とか、実は戦中戦後にも同じようなことがあったとか、バカバカしい英語学習熱も同様だとか、その他いろいろ列挙しようかと考えていたのだけれど、やっぱし、やめた。アホなこと・アホなものを気にする時間を割くのはやめよう。放っておかれても死ぬ我が身だ。幸福感に包まれていたい。そのためにちょっと良いお酒も仕入れてあるのだ。では失礼して、今から夕食の準備にかからせて頂きます。

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