2008年2月1日金曜日

患者の心得を体得する

あーあー。んんごほん。えー、どうも。声が出ませんでな。不自由しておりますよ。まぁ、これを読んでおられる方にはまずバレないだろうから黙っていても良いんですけど。何しろ「喋ってナンボ」の講釈師業としては、やはり不自由でしてな。ホンマ、困っておりますですよ。

実はですね、年末年始の休みが終わって講釈師業が再開してみると、どうも喉の調子が良くない。「やっぱし、空気が悪いんだよね。やだねぇ」と思いながら、やたら咳払いして誤魔化していたら、アッという間に声がかすれ始め、ほとんど使い物にならない状態に至ってあららんらん。懸命にうがいをしてエイヤッと喉を洗うと出血したりする。血を吐いてまで喋る講釈師ということで日本風浪花節に成り立たせる趣味はない。

普段は痛くも何ともないが、フッと喋ろうと思うと声がかすれて出ない。先日も同僚に「おはよう」と言おうとしたが、息がシャーシャーと出るばかりで何の音も出なかった。こりゃ不便だわい。

それでも業務は業務であるから何とか誤魔化していた。喉の奥から声を出すようにすれば何とか出る。幸い、大学業務は休暇に向けて減りつつある。ありがたや。とは言え、いつまでも放っておくわけにもいくまい。と考えて、近所の耳鼻咽喉科に行くことにする。

医者なんて、何年ぶりであろうか。国民の義務として保険料はバンバン払っているが、およそ医者に行かない。ご存知ですか。こういう人には、保険金還元ということでしょうか、賞状だの景品だのをくれるんですよ。わけのわからん保険制度ですな。ここにある中華鍋も安楽椅子も、すべて「健康優良家庭」に送られた景品でしてな。

やれやれ、とうとう医者に行くことになったか。あぁ。今年は景品なしかぁ。そんなつまらぬ小さな失望を抱えながら病院に到着する。間違えて隣の喫茶店に入りかけたり、靴の脱ぎ方や保険証の出し方がわからなかったりして笑われたが、これは単に医者に不慣れであるためである。

やがて「ヒグチさんどうぞ〜」と妙にニコニコ呼ばれる。他に客もいないのに大層なことだと思いつつ診察室に入る。医者はこちらの話をハァハァと聞き、「じゃぁ、こちらの機械でちょっと見てみますか。このモニターで見て頂けますし」とおっしゃる。

そんなに面白そうな機械で自分の喉が見られるなんて、夢のような話ではないか。「ええもう。ぜひ。やりましょう。みせてください」と4つ返事で同意する。我ながらすごくノリの良い返事だと思うのだが、医者はちょっと苦笑して首をかしげておられた。ううむ。もう少し病院に慣れる必要があるな。

さらに話を聞くと、鼻から光ファイバーの管を入れるのだという。え。ちょっと待ってください。そういう話だとは思わなかったんですけど。あの。もし。と言う間もなくスルスルグイと鼻から管を入れられる。あうあうあうあうあうぅ。

と苦しみながら、眼はモニターを凝視する。こりゃ面白い。鼻腔の奥をずーっと通って喉を越え、声帯に至る…と、声帯の上にかぶさるようにプクッと赤くて丸いものができているではないか。あいつが犯人か。医者は「あぁ、見えますか。これですね」とか言いながらカチカチと画像を記録している。

忌々しい光ファイバー管を抜き、一息ついたところで、医者は説明してくれる。まぁ多分ポリープか血腫でしょう。そっと様子を見ますか。お休みに入るんならちょうど良かったですね。ちょっと間を置いて、また来てください。来週にしますか。では薬を処方しておきましょう。

…という典型的なお医者トークをおとなしく聞くのに不慣れなので、こちらはトンチンカンなことをたくさん言う。へえぇ、それはどういうものですか。ははぁ、面白い。じゃぁ手や腕にできても理屈は同じということに。やっぱし年末に派手に飲んでカラオケで喚いたのが良くなかったですかな。いや、特に無茶だったとは思えませんが。あ、自分でそう思ってもダメですか。ははぁ。

やがて平和に病院を出る。自分の脱いだ靴とそっくりな靴が置いてあるのでひと騒ぎし、また笑われる。何しろ病院に慣れていないのだから仕方がない。もうわかりましたって。(1)病院に行く時には、近接の喫茶店と間違えないようにする;(2)他人が履きそうにない履物を履いていく。

その後立ち寄った薬屋でも似たような不慣れな会話を執り行い、薬を手に入れる。こんな薬を飲むなんてのも、何年ぶりであろうか。あぁ。薬〜、くすり〜、クスリ〜。(←これは「ザ・ナンバーワンバンド」を知らないとわからないかも知れませんが、まぁ気になさらず。)

では、これから今季最後の講釈師業に行って参ります。やぁれやれ。声、もつかなぁ。

ま、あとは患者の義務として、アルコール消毒をしっかりやれば良いのでありますな。そりゃもう、わかりますとも。だんだん、慣れてきましたからな。実は、早速仕事帰りに実践する予定になっております。仕方ないですよ。喉のためですからな。ではごきげんよう。

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