2012年8月23日木曜日

7時間以上かかるでぇ


(↑ここで再生できなくても、YouTubeリンクで見られます)



人様が運動するのを鑑賞する趣味などないものだから、英国五輪は見ずに過ごした。けど開会式と閉会式は盛大なショーであるからして、これは楽しく全部見たぞ。どちらも3〜4時間なので合計7時間ほど(もちろん録画を何回にも分けてiPad上で鑑賞したのである)。

いやぁ、なんと楽しい開会式であったことか。っつーか、これって、オリンピックも何も関係ない、単なる英国ショーではないか。

すなわちウィリアム・ブレイクの「エルサレム」は英国の準国歌であるから当然合唱となる。「ここイングランドにエルサレムを打ち立てるのだぁ」という涙モノに力強い内容である…が、もちろん英国はイングランドだけではなく、スコットランドとウェールズと北アイルランドをひっくるめ4人そろって変身!はしないけど「連合王国」が成立する。だからちゃんと残り3つの国々にも気を使ったアレンジになっている。この種のことは、英国に縁もゆかりもない人には少々わかりにくいのではなかろうか。

その「エルサレム」にも歌われる「緑深く快き地(green & pleasant Land)」において産業革命がおこり「暗く悪魔的な工場(dark Satanic Mills)」が建ち、植民地支配やら黒人奴隷やらといった都合の悪い話はとりあえず無視したままに英国の繁栄が表現され、英国産ポップ音楽のヒットパレードが続く。その間に種々の小ネタがちりばめられている。もちろんそれはシェイクスピアであり、ハリー・ポターであり、メリー・ポピンズであり…なんだけど、英国に縁もゆかりもない人にはちょっとわかりにくいのではなかろうか。

んでもって第二次大戦後の英国の誇りとして登場するのが国民保険制度(NHS)ですよ。患者が踊り看護師たちが踊る(あれ、本物の医療関係者たちなんだそうです)。どんなんやねん。君たちはビョーキか。それでNHSなのか。そういう問題か。

ここまでくると「英国に縁もゆかりも…」なんていってる場合ではなく、破天荒というか笑うしかないというかモンティ・パイソンを生んだ土壌が液状化起こしてますというか、あとは花火がジャカスカ爆発してもポール・マッカートニーが歌っても野となれ山となれなのである。いやぁ楽しい。

閉会式も似たり寄ったりというか、もう酔いが回ってますんで難しい話はナシですって感じで、もう英国ポップ・ロックコンサート状態である。フレディ・マーキュリーは映像出演、ケイト・ブッシュは曲だけ再生(だけどその曲 'Running Up That Hill' はまたヒットしたとか)、ちなみにローリング・ストーンズとロバート・プラントは出演を依頼されたけど実現はしなかったそうである。まぁ要するに往年のオールスター総動員ショーという、もうどこがどう「オリンピック」なんだかわかりまへん。

これほど楽しいショーをNHKとかいう日本のテレビ局が中継したときには視聴者の邪魔ばかりした上、再放送の際にはおいしい演奏をいくつもカットしており、不評だったそうである。まぁねぇ。英国に縁もゆかりもない人にはわかりにくかったんでしょうなぁ。お外の世界のことがまるでわからないまま、「グローバル化」の旗印の下に米国に生命力を吸い取られ続ける日本を象徴するような話ですわな。それでもまぁ文句を言った人がいたわけだから、不評だったってとこが救いってとこか。

およそ国とか組織とか制度とかいった大きなものが狂っているとき、まずはそれに異を唱える成員がいるところに救いを見いだすしかない。いつもニコニコ生きてはいたいけれど、そうもいかない場合、正しく文句を言うことは良いことなのだ。そうだそうだ。この緑深く快き地に理想郷を打ち立てるのだ。(…んで、日本の中でも一番緑深く快き地というべきところに大量の放射性物質が降り注いだわけですよ。萎えるで、ホンマ。)

では諸君、今宵はその決意を新たにするべく、葡萄酒で乾杯するよう、万難を排して計らおうではないか。うむうむ。


(↑ここで再生できなくても、YouTubeリンクで見られます)

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自己紹介

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日本生まれ、日本育ち…だが、オーストラリアのクイーンズランド大学で修行してMA(言語学・英文法専攻;ハドルストンに師事)。 日本に戻ってから、英会話産業の社員になったり、翻訳・通訳をやったり、大学の英語講師をしたりしつつ、「世の中から降りた楽しい人生」を実践中、のはずです。