2024年8月22日木曜日

日本名物「通用しないもの」

「自分たちだけで通用するもの」「ヨソでは通じないもの」を作り出す傾向は、どこにでもある。
共同体意識を高め、仲間の結束を固めるのに有用なのだから、当然であろう。

「これがわかるのは自分たちだけだ」「オレたちは独特だ」という意識。
これを保つのは難しい。
それを確かめるには、「他の人たちにも通じるのかな」「外の世界も観察してみよう」
という外向きの意識が必要になる。
しかし、そもそもそんな外向きの意識を否定して「オレたち」世界を固めたいのである。
ここに葛藤が生じる。

すると、いろいろと面白いことが起こるのであります。

☆第二次大戦中、時の文部省は学校で使われる英語教科書に多くの注文をつけた。
(これに逆らうと検定不合格。「注文」というより命令ですな。)
まず Japan という国名表記が気に入らないので、Nippon にしろ。
英米をはじめとする英語の連中が Japan というのであって、
我が国の名前はニッポンである。というわけだ。
面白いでしょ。
そもそも英語の連中が使う言語が英語であり、その英語では Japan というのだ。

…しかし、「問題はそこじゃない」らしい。じゃぁ、どこなんだろ。
なんだか、わかるよね。

☆近年、ある種のウィルスが世界的に流行した。
米国の製薬会社が予防接種を開発した。
これをせっせと買って、日本国民に打たせたい。
その安全性に不安を持つ人は、
科学的に無知だという印象を与えなければならない。
副作用なんて言葉を使う奴がいたら「無知だ!」と決めつけねばならない。
薬と違って、予防接種の場合は「副反応」というのだ。
「副作用」は間違い。無知。
そんなキャンペーンが続いた。
当の製薬会社のある米国では、
どちらもフツーに「副作用(side effects)」というだけである。

…しかし、「問題はそこじゃない」らしい。じゃぁ、何なんだろ。
もう、わかるよね。

☆税金、とりわけ消費税を上げる。
その際、「日本の税金は諸外国に比べてまだまだ安いのだぁ」と繰り返す。
「健康保険」「介護保険」「厚生年金」「雇用保険」等々は
税金ではないという印象を与えたい。
ほら、「税」の字が入ってないでしょ。
もちろん、「諸外国」では、この辺りはすべて「税金」である。

…しかし、「問題はそこじゃない」らしい。
すっごく、わかるよね。

☆税金を上げる際には、
「ほら、日本はこんなに景気が良くなってインフレなんだよ」
という印象を与えたい。
そこで「インフレ率」という数字をニュースに載せ、皆さんに見せる。
「モノの値段の推移」である。
その際、国際基準では
「生鮮食品とエネルギーの価格は除く」のがお約束である。
生鮮食品は、その年の気候などでばらつきが大きくなる。
景気の反映にならない。
エネルギーに至っては、産油国で戦争が勃発するだけで高騰してしまう。
景気の反映にならない。
だから「生鮮食品とエネルギーは除外して、
モノの値段の推移を観察しましょう」なのだ。
これを「コア・インフレ率」という。日本以外では、ね。

日本だけ:
「生鮮食品を除外したインフレ率」を「コア・インフレ率」と呼ぶ。
すると、どこかで戦争があってエネルギー価格が 高騰して物価が上がっても(今がそうですね)、
「うわぁ、モノの値段が上がりましたね。
景気が良いですね。増税しても良さそうですね」
という話が成立してくれる。
もちろん、日本以外の国々では通じない話である。

…しかし、「問題はそこじゃない」らしい。
わかるよね。

☆いわゆる先進国であれば「教育費」はかからないものである。
しかしアメリカや日本では大学に行くのにお金がかかったりする。
しかし、「払わなくても良いよ」という場合もある。
慣習的に「奨学金」と呼ばれる。
いや、近年の日本は違う。「奨学金」は借金なのだ。
これはとんでもない意味の変化である。
しかし、問題はそこじゃないらしい。

☆米国のETSという会社が日本向けに作っているテストがある。
TOEIC というテストである。「英語のテスト」とされている。
しかし、受けるのは日本の人(そして韓国の人など)だけである。
英語のテストなんだけど、英語の世界では通用しないのだ。
普通に考えて、誰もが首を傾げる構造である。
しかし、問題はそこじゃないらしい。

この調子で、いくらでも続けられそうですね。
みなさんも、どうぞ!

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自己紹介

自分の写真
日本生まれ、日本育ち…だが、オーストラリアのクイーンズランド大学で修行してMA(言語学・英文法専攻;ハドルストンに師事)。 日本に戻ってから、英会話産業の社員になったり、翻訳・通訳をやったり、大学の英語講師をしたりしつつ、「世の中から降りた楽しい人生」を実践中、のはずです。